ゴールデングローブ賞では、主演のクリスチャン・ベールが主演男優賞を受賞し、アカデミー賞では、作品賞を含む8部門でノミネートを果たし、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しました。
ディック・チェイニーを演じたクリスチャン・ベールだけではなく、ジョージ・ブッシュを演じたサム・ロックウェルなど、人物に完璧になりきった演技は見ものです。
アメリカを滅茶苦茶にした男の半生を描いた映画になっています。今回は映画『バイス』のあらすじやネタバレ・キャスト・感想や評価を描いていきます。
Contents
映画『バイス』の作品紹介
・監督:アダム・マッケイ
・脚本:アダム・マッケイ
・製作:アダム・マッケイ
ウィル・フェレル
・製作総指揮:チェイシー・バーナード
・ナレーター:ジェシー・プレモンス
・音楽:ニコラス・プリテル
・配給:アンナプルナ・ピクチャーズ
・公開:アメリカ 2018年12月25日
日本 2019年4月5日
・製作国:アメリカ
映画『バイス』の監督は、「マネーショート 華麗なる大逆転」や「アントマン」で監督を務めたアダム・マッケイです。コメディ映画を手がけることが多く、映画『バイス』に関しても、社会をかなり抉った内容にも関わらず、要所に散りばめられたコメディがアクセントになっています。
主演を務めたクリスチャン・ベールは、ディック・チェイニーを演じるための役作りとして、18kgもの増量を行なったそうです。
キャスト陣の役作りの完成度が非常に高く、これらはアカデミー賞でもメイクアップ&ヘアスタイリング賞に結びつきました。
映画『バイス』のあらすじ(ネタバレなし)
1960年代半ば、青年だったディック・チェイニーは酒に溺れ、のちに妻となる恋人リンに愛想を尽かされそうになっていました。リンに尻を叩かれる形で更生を果たしたチェイニーは政界への道を志ざします。
インターンシップ時代には、型破りな下院議員だったドナルド・ラムズフェルトのもとで政治の手腕を吸収していきます。のちに大統領首席補佐官や、国防長官を歴任、ジョージ・ブッシュ政権誕生時には副大統領に就任します。
副大統領に就任したチェイニーは、大統領権限を駆使して、自らの権力を拡大させていきます。そして、2001年9月11日の同時多発テロ事件では、大統領を差し置いて危機対応にあたり、アメリカをイラク戦争へと導いていきます。
国内世論を思うままに操り、法律や憲法も拡大解釈によって、自らの権力を誇示していく中でも、チェイニー自身は副大統領として影に隠れた存在で居続けました。
そんなアメリカの運命を塗り替えた人物の半生を描いた映画です。
映画『バイス』の登場人物とキャスト
ディック・チェイニー(クリスチャン・ベール)
『#バイス』😎🇺🇸森達也さん @MoriTatsuyaInfo(作家/映画監督/明治大学特任教授)コメント
ありえないほど刺激的、そして挑発的、さらに徹底した権力批判、そしてエンターティメント。ラストのロールクレジットの後、絶対に何かしかけてくると予想していた。思ったとおり。最後の最後まで揺さぶられた。 pic.twitter.com/NxuAIByTjL
— ロングライド|映画配給 (@longride_movie) 2019年4月8日
ジョージ・ブッシュ大統領の副大統領を務め、強大な権力を背景にアメリカをイラク戦争へと導いていく。
ジョージ・W・ブッシュ(サム・ロックウェル)
ブッシュ大統領役は『スリー・ビルボード』のサム・ロックウェル!そっくり👀https://t.co/qmMjZLAwBZ #バイス #バイスやばいっす pic.twitter.com/ogVZsJ7LHZ
— シネマトゥデイ スタッフ (@cinematoday_stf) 2019年4月8日
アメリカ第43代大統領。アメリカをイラク戦争へ導いたと悪名が高いが、実は副大統領のディック・チェイニーに操られている。
ドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)
_人人人人人人人人_
> クリソツ‼️ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄4/5(金)公開『#バイス』ドナルド・ラムズフェルドを演じた #スティーヴ・カレル と本人の比較画像👬
ベストセラーの著書「Known and Unknown A Memoir」について米トーク番組に出演した動画はこちら(ご本人) ▶️ https://t.co/S31PTh2Tar pic.twitter.com/bJe0MASiAM
— ロングライド|映画配給 (@longride_movie) 2019年3月14日
ジョージ・ブッシュ政権時に国防長官に就任した人物。ディック・チェイニーとは長年の師弟関係にある。
リン・チェイニー(エイミー・アダムス)
/
4/5(金)公開『#バイス』
そっくりキャストのおさらい😎🇺🇸
\👈左:ご本人
👉右:キャストディック・チェイニー副大統領/#クリスチャン・ベール
ジョージ・W・ブッシュ大統領/#サム・ロックウェル
リン・チェイニー/#エイミー・アダムス#バイスやばいっす pic.twitter.com/7HQfJhaUkp— ロングライド|映画配給 (@longride_movie) 2019年4月4日
ディック・チェイニーの妻。青年期酒に溺れて素行の悪かったチェイニーを立ち直らせる。自身も著作家などとして活躍をする。
映画『バイス』のあらすじ結末ネタバレ
1941年ディック・チェイニーは、アメリカ合衆国ネブラスカ州に生まれます。名門大学に在籍するも酒癖が悪く、飲酒運転での逮捕歴もあるほどでした。当時交際をしていたリンも愛想を付かそうとしていたのですが、なんとか尻を叩くことでまともになろうとします。
チェイニーが政界に関わりを持ち出す
チェイニーはインターンシップとして政治家の補佐として活動を始める中で、当時気鋭の下院議員だったドナルド・ラムズフェルトと出会う。彼から政治に関するノウハウを吸収していく中で、権力に虜になっていくチェイニーは、自身の才能を開花させます。史上最年少の若さで大統領首席補佐官を務め、国防長官の職にも付きます。
政界からは離れ石油会社のCEOを務める
政治家としてのキャリアを築いてきたチェイニーでしたが、1995年からは石油会社ハリバートンのCEOを歴任します。このハリバートンは石油の掘削や軍需産業で巨額の利益を上げていきます。
ジョージ・ブッシュから副大統領に推薦される
順風満帆な人生を送っていたチェイニーでしたが、ジョージ・ブッシュから副大統領になってくれないかと打診されます。チェイニー自身、これまでの輝かしいキャリアと比較しても、副大統領は形だけの仕事であると感じており、あまり乗り気ではありませんでしたが、大統領権限を拡大させ、自身に多大なる権限を持たせることを条件に推薦を受けます。
同時多発テロからイラク戦争へ
副大統領として、自らの権力を拡大させる一方で、2001年9月11日に同時多発テロ事件が発生ます。その際は、チェイニーが大統領に変わって、執務を行うなど、大統領と変わらないほどの権力を有していました。
その中で、世論を操作し、アメリカをイラク戦争へと導いていきます。
チェイニーから国民へ
アメリカの権力を思うままにしたチェイニーは、アメリカの歴史を塗り替えていきます。そして、映画のラストでは、チェイニー自身が画面に向かって語りかけ「私は国に仕えていただけだ」という言葉を残します。
PR会社の実験として集められた被験者がこの映画の感想や意見を語っていきます。ある者は「リベラル臭がする」と批判し、ある者はそれに応戦します。そして、若い女性は「次のワイルドスピードが楽しみね」と言い、映画は終わっていきます。
映画『バイス』の見所は?
映画『バイス』の見どころとしては、アメリカで起きていた衝撃的な事実を描いているという点と、キャストの迫真の演技、アカデミー賞を受賞したメイクアップです。
まず、この映画の内容としては、人物の歴史に関しては、詳細な部分は明らかになっていないものの、アメリカ政府で起きていたこととしては事実です。同時多発テロ事件が発生してから、イラク戦争に発展していく流れの中で、アメリカ政府で起きていたことをチェイニーという人物を中心に
描いています。あまりに強大な権力を握っていたチェイニーという人物、そして、その事実に今まで目を向けてこなかった私たちの浅はかさが浮き彫りにされます。
そして、チェイニーやジョージ・ブッシュをはじめとする実在の人物を演じたキャスト陣の演技にも注目です。本人と見紛うようななりきりぶりは映画としての面白さに多大なる貢献をしています。
映画『バイス』の感想・評価
『バイス』
皮肉を重ねながらも立場を表明しない自由過ぎる告発は〝極悪〟を凌駕する軽快&爽快さw面白い!尊重し守るべきものが明確なタカ派チェイニーが取り憑かれた権力。ここぞと大統領を転がすも妻への愛と野心に転がされた持たざる副大統領の人心掌握術。そんな稀代の凶運に持病までも力を貸すw pic.twitter.com/fyNdDhplid— コーディー (@_co_dy) 2019年4月5日
【 バイス 】
余りに見事な変身ぶりや演技に、チェイニーがクリスチャン・ベイルという事はいつしか抜けていた。
彼の野望と成功はどこまで高く重ね続けられたか。
今も印象に強く残る9.11事件の裏側が幾ばくか理解できたように思う。
今の日本の政治の裏側もいつかリアルな映画にならないだろうか。 pic.twitter.com/V28tLwucG1— かりん (@hutarigakesofa) 2019年4月5日
バイス観た。こりゃすごい。まずこの喧嘩腰な物作りの仕方が最高だし、目まぐるしく変わっていくストーリー展開は匠のなせる技。トランプであろうが誰であろうが、どんな酷い政治家も最初は国民によって選ばれた人であって、あくまでも民主主義に基づいているってことを忘れちゃいけない。 pic.twitter.com/XDqYyi4tCN
— はるか (@ah290504) 2019年4月6日
『バイス』
こんな映画作っちゃうアメリカすげえ…日本じゃ作れないよね…インパクトは間違いなく今年一。恥ずかしながらちんぷんかんぷんな所が多くて関心の低さを自覚。笑えるはずの皮肉も内容の衝撃で途中から笑えなくなってた。チェイニー氏の考えは理解できなくても世の中のことは理解しなきゃ。 pic.twitter.com/vcHanXPJSm— ちひろ🎀 (@Chii_wm) 2019年4月5日
筆者が映画『バイス』を見た感想レビュー
映画『バイス』を見ながら、次第に肥大していくチェイニーの権力に恐れを感じながらも、それを成し遂げてしまうチェイニーの政治手腕に驚きを感じてしまいました。そして、映画のラストシーンで、明らかになるのは、権力者を作り上げているのは私たち自身であることが現実として突きつけられます。
政治家はあくまで選挙によって選出される存在です。世論を味方につけなければ、充分に機能することはできません。その上で、チェイニーは政策を実現するために情報操作などを駆使して世論を味方につけていきます。
イラク戦争時には、ブッシュ政権の支持率が90%を越えていたという事実は、何もアメリカ国民の愛国心がそうさせただけではないということが如実に描かれています。
そして、情報操作のやり方も実に合理的に行われているシーンが作られていました。PR会社に集められた被験者にテーマを与えて意見を出し合ってもらい、局面ごとにポジティブな感情やネガティヴな感情が起きた瞬間を観察していきます。その中で、政策をどのようなメッセージで伝えるのがいいのかということが決定されていきます。
例えば、「遺産税」や「相続税」と書けば、支払わなければいけないという感覚になりますが、「死人税」と表記すれば「死人から税金を取るのか!」という感情になります。
そのほかにも「地球温暖化」を「気候変動」と言ってみたりすることで、巧みに世論を操っていきます。
ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言なども、こうした背景にあったことを考えると、この映画で語られているメッセージとしては、権力に溺れた人物に対する批判よりも、それを何も考えずに受け入れてしまっている私たちに向けた批判なのではないかと思ってしまいました。
映画『バイス』をみながら、要所要所で挟まれているコメディシーンなどをみながら、権力が肥大化していくチェイニーに対して、権力に溺れた悪者という印象を抱きながら見ていたのに対して、ラストシーンでそうやってみていた自分の愚かさに気付かされてしまいます。
映画『バイス』の動画配信情報
映画『バイス』が見られる動画配信サービスとしては以下のようになっています。
映画『バイス』は、日本では2019年4月5日に公開された最新作でもあるので、動画配信サービスで公開されるのは、まだ先になりそうです。ただ、これらの動画配信サービスの中では、U-NEXTが最新作をいち早く公開することでも知られているので、映画『バイス』を動画配信サービスで見るのであれば、U-NEXTがおすすめです。
映画『バイス』の監督を務めたアダム・マッケイ作品であれば、「マネーショート 華麗なる大逆転」や「アントマン」がU-NEXTで配信されているので、映画『バイス』が配信される前に楽しんでみてください。